明けましておめでとうございます。
本年も皆さまどうぞよろしくお願いします。
年末から正月を振り返ってみますと、
例年にも増して大量の松を扱ったなあ、という印象です。
ホテルやオフィスのお正月の活け込みや、
お正月アレンジメントのお届け、
門松の設置、お正月花束・飾りの販売、
いけばな諸流派への納品など、
12月中旬から松の内まで、ずーっと松と接していた感じです。
■花茂本店の松の仕入れ
12月に、「松市」という一大イベントが各市場で開催されますが、
松市だけでは、花茂本店が求めるサイズの大きいものや質の良いものを必要なだけ揃えることができないのが現実です。
もちろん松市での仕入れ分もあるのですが、
産地から直接仕入れることも多々あります。
東日本で言えば、秋田・福島・茨城・浜松・富士など様々な荷主さん(生産者)から松を直接仕入れています。
■波崎の松
街がクリスマスでにぎわっているころ、
私は茨城県の波崎(鹿島アントラーズの本拠地あたり)に松を切りに行っていました。
海に近い波崎は日本でも有数の松の生産地です。
幹線道路沿いに黒松の畑が一面に並んでいる感じです。
■日本の松の種類
日本に自生する松の種類は黒松・赤松・五葉松・這松・朝鮮松などで、
実は正月に皆さんが目にするのは殆どが黒松です。
門松に使われる若松も黒松の若いものです。
(若松・小松・根引松は黒松の長さや枝ぶり違い、寿松は黒松と五葉松の掛け合わせ)
一般に黒松は海岸、赤松は低山帯、五葉松/這松/朝鮮松は高山帯に育ちます。
砂地が多く水はけのよい波崎は黒松の生産にぴったりだったんですね。
■生育・出荷作業
まず、同じ黒松といっても若松と小松では形が違うので、
作付の段階から植え方が違います。
縦に伸ばしたい若松は間隔を狭めて苗を植えます。
種をまいて一年、植えこんで二年、四年目に若松として出荷されますが、
実際に商品として出荷できるのは作付した松のうち約65%だそうです。
この比率は、塩害や水害と、選定基準の厳しさによるものです。
潮風にあたると松が赤くなってしまいますし、水害で根腐れするケースもあります。
夏場の台風被害と雨の降り方で、大きく歩留まり率が変わってくるのですね。
■高齢化と後継者不足
選別は、出荷最盛期の11月から開始されるのですが、
この2か月間だけの出荷であること、作業員が高齢化していることから、
人員確保が年々困難になってきているとのこと。
また、昭和60年頃には、波崎の千両・松の生産組合には90軒の生産者が加入していましたが、
現在では30軒あまりになっています。これは後継者不足によるところが大きいそうです。
産地の状況は厳しいですね。
こうなると、いけばなで利用される特殊な松の確保も次第に大変になってきます。
松が大量に扱われるのは一年でこの時期だけですが、
松の良さを最大限アピールできるよう努力していかねばなりませんね。