花束に使っても映えるアンスリウム。豊富な種類と可愛らしいハート型が魅力的な夏の花

赤いアンスリウム

日本各地で酷暑が続く日々ですね。日本のような温帯地域では、夏は多くの植物が葉を繁らせ、太陽の日差しをいっぱいに浴びて光合成を進め成長する季節。

夏を開花の季節とする在来種の草花や木は、春に比べては多くはありませんが、花の少ないこのシーズンでも、最近は外国原産の夏を開花期とするさまざまな植物が輸入されたり国内で生産されるようになっています。

生花店で取り扱う切り花の中で、夏を最盛期とする花といえば、ユリ、ヒマワリ、ケイトウ、キキョウ、トルコキキョウ、アンスリウム、デンファレなどがあります。

今回のブログではその中のひとつ、アンスリウムについて特徴や品種、お手入れ方法などをご紹介します。

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この記事の執筆者

青山花茂本店スタッフ

東京・表参道にある宮内庁御用達の生花店です。花一輪一輪を大切にお作りしたアレンジメントや花束、名人達が丹精こめて育てた蘭鉢や花鉢など、最高品質のフラワーギフトを全国へお届けしています。1904年の創業時より培ってきた、花の知識やノウハウを綴っていきます。

アンスリウムってどんな花?

鉢植えでも、切り花でも楽しむことができるアンスリウム
トロピカルなイメージのデザインにも多用される個性的なフォルムで、夏を最盛期とする花の代表格のひとつです。

何より日持ちの良さが人気の理由の一つではありますが、ハートの形をしたアンスリウムは、風水においても幸せの意味を持っているようで、お部屋に飾る植物としても人気があります。

アンスリウムについて

ピンクのスモークツリー

アンスリウムの原産地はコロンビアやグアテマラなどの南米の熱帯雨林で、ジャングルの大木の木陰に生える多年草です。植物の分類ではサトイモ科ですが、サトイモ科はその花のフォルムが独特。中央の肉穂花序(ニクスイカジョ)という突起状の小さな花の集まりをぐるりと包むような仏炎苞(ブツエンホウ)という部分が花に見えます。

日本在来の花では初夏に高原の清流に咲く水芭蕉(ミズバショウ)もサトイモ科の仲間。水芭蕉のシルエットを想像すると、「肉穂花序」と「苞」の構造がアンスリウムに似ていませんか?スタイリッシュな花材として切り花での流通の多い「カラー」も、同じサトイモ科です。

詳しくはこちらの記事でも紹介しているので参考にしてみてください。

関連記事:「個性的な魅力をもつ花、カラー。歴史や品種、選び方のコツや飾り方など

南米原産のアンスリウムは、1990年代までは輸入のものが大半でしたが、現在は国内各地でも生産されています。ビニールハウスの温度・湿度管理や遮光程度などのきめ細かい工夫をこらして、切り花はほぼ年間を通して出荷され、鉢植えは初夏を出荷のピークに、多くの種類のアンスリウムが生産されています。

南米原産のアンスリウム
切り花のアンスリウム生産の様子

アンスリウムの種類と品種

アンスリウムはいくつか品種がありますが、生花店などでは一般的に「アンスリウム・アンドレアナム」という品種(和名はオオベニウチワ)の改良品種が出回っています。多くの方が想像される、苞や葉に光沢のあるアンスリウムです。

他にも、葉の造形を楽しむタイプの「アンスリウム・マグニフィクム(ビロードウチワ)」・「アンスリウム・クリスタリヌム(シロシマウチワ)」・「アンスリウム・ルネッサンス」などもありますが、今回は切り花として流通しているアンドレアナムの改良品種を中心にご紹介します。

花の業界では、アンスリウム(アンドレアナム)は、その形状でいくつかに分類されています。「アンスリウム(=スタンダードのアンスリウム)」「オバケアンスリウム」「チューリップアンスリウム」「ミニアンスリウム」「バタフライアンスリウム」などです。

とても大きな「オバケアンスリウム」

「オバケアンスリウム」は、苞が30cm前後まで大きくなるアンスリウムの総称で、1980年代に品種改良されてできた大きな品種に、ハワイ日系人の生産者の方が「オバケ」と名付けたことがきっかけと聞きます。今では、その品種だけでなく、巨大なアンスリウムの総称として「オバケ」が使われているわけです。

オバケアンスリウム
1980年代後半、ハワイから入荷し始めた頃のオバケアンスリウム

とても小さな「ミニアンスリウム」

「ミニアンスリウム」には明確な定義はありませんが、苞が小さなアンスリウムは「ミニ」と呼ばれています。元々が小さな品種だけでなく、市場の方によれば、通常は普通サイズのスタンダード品種が「小さくしか育たなかった」場合でも「ミニアンスリウム」として流通しているといいます。

ミニアンスリウムの比較
ミニアンスリウムとスタンダードなアンスリウムの差は歴然

縦長のシルエット「チューリップアンスリウム」

縦長でチューリップのような形をしている品種をまとめて「チューリープアンスリウム」と呼びます。繊細なイメージがあるので、近年は人気が高まっています。チューリップの他に、輪郭が特徴的な「バタフライアンスリウム」と呼ばれる品種群もありますが、生花店への流通は少ない印象です。

チューリップアンスリウム
他のアンスリウムよりも肉穂花序が大きい印象

スタンダードなアンスリウムの多彩な色味

苞の色は、赤がポピュラーですが、白、ピンク、紫、グリーン、ピンクと白のグラデーションやマーブル模様など、さまざまな品種があります。その一部をご紹介します。

赤いアンスリウム

アンスリウムの定番品種「トロピカル」。その名の通り、南国のトロピカルな雰囲気が特徴。

グリーンのアンスリウム

はっきりとした緑がきれいなアンスリウム「ミドリ」。一年を通して、多く出回っているカラー。

ピンクのアンスリウム

淡いピンクの苞と緑がかったクリーム色の肉穂花序をもつ「プレミアピンク」。全体的に柔らかな色合い。

白いアンスリウム

この時期に人気の涼しげな白いアンスリウム「スノーウィー」。淵のグリーンがオシャレな品種。

 

結婚式の花束としても人気のアンスリウム

ハート型の苞を持つアンスリウム。ロマンチックなフォルムとリゾート感溢れる雰囲気から、最近では結婚式の花束にアンスリウムを取り入れる方も増えてきています。アンスリウムはカラーバリエーションが豊富なので、好みのテーマに合わせてさまざまな雰囲気を演出することができます。

青山花茂でも、結婚式以外にもお祝いなどさまざまなご用途で、アンスリウムを使った花束やアレンジメントのご依頼をいただいています。

ピンクと白のアンスリウムのブーケ

淡いピンクと白のアンスリウムを主役に、セルリアやレースフラワー、オカトラノオなど、柔らかな色調の花々をふんわりと束ねた花束。

 

ピンクと紫のアンスリウムのブーケ

こちらは淡いピンクと紫の2種類のアンスリウムをランダムにレイアウトし、白いデンファレや細やかなリーフ、実ものなどを合わせた華やかな花束です。

 

白とグリーンのアンスリウムのブーケ

グリーンと白のアンスリウムやカラー、レースフラワーなどの花々で清らかな印象に。大人っぽく上品なデザインに仕上げました。

 

アンスリウムの花束は、この時期のお祝いやイベントにぴったりな花材です。
アンスリウムを使ったフラワーギフトをご希望の場合は、お電話またはWebフォームよりご連絡ください。色味やデザインなどのご要望を伺い、青山花茂のフラワーデザイナーがご用途にふさわしくお作りします。

アンスリウムの育て方とお手入れ方法

白いアンスリウムの鉢植え

生花店で購入したり、プレゼントされたアンスリウム。ご自宅で長くお楽しみいただくために、鉢植えの育て方と切り花のお手入れ方法をご紹介します。

鉢植えの育て方

置き場所について

アンスリウムは高温多湿に強く、耐陰性もあるため、室内の日光が入る場所で育てることができますが、直射日光に当てると葉が焼けて変色してしまうので注意してください。レースのカーテン越しなど、柔らかな日光が差し込む場所に置くのがおすすめです。なお、アンスリウムは寒さに良いため、冬は室内に入れて管理してください。

水やりについて

春から秋は土の表面が乾いたらたっぷりと水をやりましょう。冬は春から秋と同じような頻度で水をやると根が腐って枯れてしまうため、乾かし気味に管理します。土が乾いて数日経ってから水を与えてください。

切り花のお手入れ方法

生花店で購入する際は苞に艶があるものを選ぶ

鮮度の良いアンスリウムは苞に艶があります。逆に鮮度が落ちてしまったアンスリウムは、苞にハリがなく、しおれています。生花店で切り花を購入する際は、苞の状態を確認して選ぶと良いでしょう。

室温を10℃以上に保つ

先ほども述べたように、アンスリウムは寒さに弱く、暑さには比較的強い花です。10℃以上の室温で直射日光を避けて飾るようにしましょう。また、夏場はエアコンの風が直接当たらないように注意してください。

毎日の水換えと水切りを行う

アンスリウムに限ったことではありませんが、毎日の水換えと水切りは花を長持ちさせる上でとても重要です。特に夏場は水が腐りやすく、水換えを行わないだけで花がすぐに傷んでしまうため、花瓶の水換えはできるだけ毎日行ってください。

そして、茎の先を水に浸した状態で茎の先端1cm〜2cm程度をカットし、水が吸い上げやすくなるように水切りを行いましょう。

アンスリウムを使ったフラワーギフトのご紹介

ピンクのアンスリウムとワイルドフラワーのエキゾチックな花束

ピンクのアンスリウムのブーケ
夏の花束<ブリジット>

鮮やかなピンクのアンスリウムと、オーストラリアや南アフリカ原産のワイルドフラワーを合わせた豪華なロングスタイルの花束。暑さに強い花々でお作りした、夏の季節限定のフラワーギフトです。

夏の花々の季節感豊かな床置きアレンジメント

グリーンのアンスリウムと白い八重咲ユリの床置きアレンジメント
床置きアレンジメント<シエル>

白い大輪八重咲きユリやライムグリーンのアンスリウムに、高さのあるテッポウユリやリーフを合わせた、爽やかな白・グリーンだけのデザインです。

涼しげで洗練された八重咲きユリとアンスリウムの花束

アンスリムと八重咲きユリのブーケ
花束<ニンフ>

白い八重咲きユリやスプレーバラ、ライトグリーンのアンスリウムやトルコキキョウなど、白とグリーンの花々だけで仕上げたスタイリッシュな花束です。

お部屋にトロピカルな演出を添えるアンスリウムの鉢植え

アンスリウムの鉢植え
アンスリウム<ミスティーク>

淡いピンクからグリーンへのグラデーションが美しい色に変化するミスティークという品種のアンスリウムです。青山花茂では、切り花だけでなく鉢植えもご用意しています。

暑い夏こそアンスリウムの美しい季節

グリーンのアンスリウムの花瓶花

豊富な種類と個性的なフォルムが魅力のアンスリウム。爽やかな清涼感と南国らしいトロピカルな雰囲気は、夏のお部屋を美しく彩ります。何より、花の日持ちが悪くなる暑い夏でも、比較的長く楽しんでいただける品種です。

ご自宅用にも、大切な方への贈り物にもふさわしい夏のアンスリウムをどうぞお楽しみください。

 

この記事の監修者

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株式会社青山花茂本店 代表取締役社長

北野雅史

1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。
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