お祝いや記念日の贈り物で花を選ぶシーン。フラワーアレンジメントは、花束とは違う魅力のあるギフトです。届いたらそのまま飾るだけのフラワーギフトであるフラワーアレンジメントの魅力、アレンジメントを贈るときの選び方や、いけばなとの違いまでご案内します。
目次
フラワーアレンジメントとは?
フラワーアレンジメントとは、一般的に花器の底に敷いた吸水スポンジに花を挿して飾りつけることをいいます。根のついた鉢物ではなく、茎を切った状態の「切り花」をお届けする際に、基本的にはアレンジメント・花束・スタンド花のいずれかを選ぶことになります。青山花茂でお届けする切り花商品のうち、6割ほどを占めるのがアレンジメントです。
花束よりアレンジメントの方がデザインの自由度も高く、使う器によって雰囲気も変わります。
フラワーアレンジメントを「アレンジメントフラワー」と呼ぶ場合もありますが、大きな違いはないと思っています。また、私たち生花店スタッフは、フラワーアレンジメントを「アレンジメント」や「アレンジ」と略して呼ぶことが多いです。かつては器の多くがバスケットだったことから、年配の方は、フラワーアレンジメントのことを籠花(カゴバナ)と呼ばれる場合もあります。
魅力は華やかさと手軽さ
アレンジメントの魅力は、華やかさと手軽さを兼ね備えているところでしょうか。
器に生けられた花は「美しいお花をそのまますぐに飾る」ことができますので、贈る相手の手を煩わせる心配がありません。
開店祝いや開業祝いなど事業スタートでお忙しいとき、入院のお見舞いや引っ越し祝いなど、さまざまなシーンで選ばれています。アレンジメントのご要望のほうが花束よりも多いことの大きな理由は、そのまま飾れる手軽さにあると思います。
もちろん贈答のシーンで映える花束の良さもありますし、花の扱いに慣れた送り先の場合は、自由に花瓶に生けられる花束を望まれる方もいらっしゃるでしょう。
また、生花店では、教室でのレッスンやご自身で作ることを楽しみたい、とアレンジメントの花材を選びにこられるお客さまもいらっしゃいます。
生花だけでなく、プリザーブドフラワーのアレンジメントも
生花だけでなくプリザーブドフラワーを使うアレンジメントもあり、「プリザーブドフラワーアレンジメント」などと呼ばれます。
プリザーブドフラワーとは、長期にわたって花の美しさを表現するために生花に特殊な加工をしたもの。
生花のアレンジメントの場合、定期的な水やりが必要で、つぼみが開花したり、咲いた花が枯れたりと時間を追って変化しますが、プリザーブドフラワーアレンジメントの場合、水やりは不要で手間がかからず、時間がたっても状態は変わりません。ただし、日当たりの強いところやほこりっぽいところに置いておくと、色があせたり、ほこりがついてしまったりしますので、飾る場所には注意が必要です。また、プリザーブドフラワーは単価が高いので生花に比べてボリュームが出しづらいという特徴もあります。
長持ちがするという利点をもつ一方で、やはり生花のようなみずみずしさがなく、同じ単価でもボリュームは小さくなる。生花のアレンジメントとプリザーブドのアレンジメント、それぞれ一長一短といったところでしょうか。
いけばなとの違いは?
花器に花を挿していくアレンジメント。「花を挿す」という意味では、日本の伝統芸術である「いけばな」と同じ。西洋発のアレンジメントといけばな、何が違うのか、たまにご質問いただくことがありますので、ここで簡単に紹介したいと思います。
引き算と足し算の美学とは? 非対称の美
「アレンジメントは足し算の美学、いけばなは引き算の美学」と言われるように、表現に大きな違いがあります。
いけばなと比較すると、そもそもが欧米出自のモノですから、フラワーアレンジメントにはボリューム感や花の密度を求め、華やかさ・ゴージャスさを志向する傾向があると感じます。
いけばな作品にもさまざまな表現方法があり一括りにするのは難しいですが、自然の美を手元で再現しようとすることが多く、どちらかといえば最低限の材料で表現することが求められていると思います。 仮に「自然美には無駄がない」とすれば、いけばなの創作の過程で無駄を省く「引き算」が行われていることも頷けます。
また、特にいけばなのデザインでは非対称の美を重んじることが多く、人の手で作られたものでありながら、人工的・機械的なデザインから距離を置く傾向も感じます。 非対称の美を追求していることは、それぞれの流派の基本の「花型」を見ると必ず非対称に設定されていることからも伺えます。
ただ、フラワーアレンジメントもいけばなの世界も、日々進化しています。非対称性を意識したフラワーアレンジメントや、野に咲くように生けるフラワーアレンジメントも良く目にしますし、一方では型にはまらない前衛的ないけばなも盛んです。上記のようなラベル付け自体が意味をなさないような気もしています。
使う花材の違い
フラワーアレンジメントといけばなは、使う花材が違うと思われる方もいらっしゃいますが、共通する花材もたくさんあります。フラワーアレンジメントは「洋花」を使う、生け花は「和花」を使う、という決まりがあるわけではありません。
そもそも定義として、「和花」とは、明治のころまでに日本に自生していたものを指すと考えられています。菊・百合・竜胆(リンドウ)・桔梗(キキョウ)・蓮(ハス)などが現在も流通している和花の代表格でしょうか。しかしながら、オリエンタルユリのように、日本に自生していた球根がヨーロッパで品種改良されて逆輸入されるものもあり、「オリエンタルユリは洋花」と定義する人が多いでしょう。一方、蓮の花のように明治期に日本に自生していたが原産地は中国、という花もあり、なかなか和花と洋花の切り分けも難しいところです。
ところで、いけばなとフラワーアレンジメントそれぞれで使用する花材で、決定的に違うのが「枝もの」です。いけばなには「枝もの」が欠かせませんが、例えばアレンジメントや花束を作ってくれる駅ナカの生花店の店内を眺めれば、枝ものを豊富に用意しているケースは少ないでしょう。
「枝もの」は「和花」のカテゴリに入るので、その意味では「いけばなでは和花、アレンジメントでは洋花を使う」という印象を持ちやすいかもしれませんが、いけばなでは「バラ」・「カーネーション」・「ガーベラ」などのザ・洋花もたくさん使うのです。
逆に日本の生花店が作るアレンジメントで和花を使うか、というと、「菊」・「リンドウ」・「キキョウ」などは使うこともあるけれど、全体からするとそれほど多くないと言えるでしょう(お供えで菊を使う機会もだいぶ減ってきました)。従って、一般的には「いけばなでは洋花も和花も使う」・「アレンジメントはほとんど洋花を使う」という認識が正しいと思われます。
ただ、「いけばな事業部」を持つ青山花茂は少々特殊でして、枝ものを中心とした和花が豊富に揃うため、「アレンジメントなのに和花を使う」というデザインを多く展開しています。特にお正月アレンジメントでは、松や梅や水仙など和花のみで作ったアレンジメントや、洋花と和花をミックスさせたアレンジメントなど、「和花を生かしたアレンジメント」がご好評をいただいています。
青山花茂本店いけばな事業部では、生け花用花材の販売もしています
オアシス、剣山、はさみ 道具の違い
いけばなとアレンジメントは、ご存知の通り使う道具にも違いがあります。
花を挿すための吸水フォーム、「オアシス」と呼ばれるスポンジのようなものは、フラワーアレンジメントでのみ使われます。
いけばなの花留めでもっともポピュラーなものは、器の底に置いて挿していく「剣山」で、剣山では留まりにくい植物には「七宝」(しちほう・しっぽう)という、金属製の筒状の留め具を使っています。七宝の方が、歴史が古いそうです。
フラワーデザインの世界では、茎を固定したりするなどの細工のために、ワイヤーやフローラルテープなどを使いますが、いけばなの世界では、小さな枝や竹などを花留めの細工に使う場面を見かけます。自然のものを使うケースが多いことに、歴史の深さを感じますね。
はさみについては、いけばな界ではかつて、ハート型の大きな花ばさみを使う方が大半でした。
当時はフラワーデザイナーも大きな花ばさみを使う方が多かったようですが、今はフラワーデザインの世界でもいけばな界でも、使いやすい小さなハサミを使う方が大半になってきました。
いけばなでは枝を扱うことも多いため、その場合は剪定鋏(せんていばさみ)のように強いはさみを使っています。
フラワーアレンジメントのお値段はどう見る?
花屋さんでフラワーアレンジメントを作ってもらうとき、お値段はどれぐらいで考えるといいのか、慣れないうちは不安もありますよね。アレンジメントの値段は、花の種類や使う本数によって変わります。また、野菜などと同じで、同じ種類でもお店ごとに値段が異なります。
アレンジメントは予算3000円くらいから
お花の1本あたりの単価は、多くの花屋さんで数百円はするので、小ぶりのサイズのアレンジメントであっても、最も安くて3,000円ぐらいの予算を考えておくと良いでしょう。(青山花茂本店ではお花代税別5,000円以上からお届けをお受けしていますが、ご来店であればお花代の下限はありません。)
3,000円を下回ると、少々寂しくなってしまいます。逆に5,000円・10,000円と予算を上げると、花のボリュームが増えていくことになります。
選ぶ花でボリュームは変わる。
ボリュームと価格はほぼ比例するのですが、アレンジメントの値段は、選ぶ花の種類で左右されることにも注意が必要です。
例えば予算の兼ね合いで「大きく見えて、でも予算を抑えたい」場合、どんな花がベストなのか。
・バラなど、一本あたりの単価は高いけどボリュームは出しにくい花。
・ユリやダリアなど、一本あたりの単価は高いが、それなりのボリュームが出せるもの。
・カーネーションやガーベラなど、比較的安価なので本数をたくさん入れてボリュームを出せるもの・・・
花という商材は「価格に対してのボリューム」がさまざまなので、選ぶ花によってアレンジメントの仕上がりのボリューム感は変わってきます。もちろん、茎の長さでシルエットのボリューム感をコントロールすることはできるのですが、そうなると密度がスカスカになってしまうので、茎の長さだけでボリュームを作るのには限度があります。
花を頼むことに慣れてくれば「ボリュームを出したいのでこの花」と指定しても良いですが、イメージがつきづらい場合は、花屋さんに「ボリューム」「高級感」など重視したいポイントを伝えると良いですね。
また、花を選ぶときは、作り置きでなく新鮮な花を選び、その場で作ってもらうほうが日持ちすることも、あまり知られていないことかもしれません。作るのに少し時間がかかる時もあるので、時間のある時に生花店を行き、今からアレンジメントを作って欲しいと伝えましょう。
スタイルで選ぶ アレンジメント
贈答のシーンや、置くスペースなどによって、アレンジメントのスタイルを選ぶと、お相手にも喜ばれると思います。
お渡しして持ち帰っていただくのに大きすぎるアレンジメントは好まれませんし、広いお家やオフィスに届けるなら、高さのあるアレンジメントが映えるでしょう。
オーソドックスなスタイルのアレンジメント
どの生花店でも、「おまかせアレンジメント」と伝えれば出来上がるのが、放射状のシルエットに仕上げるデザイン。青山花茂のオンラインショップでも最も展開数の多いスタイルです。
卓上に映えるアレンジメント ラウンド、四方見(しほうみ)、オーバルスタイル
着席のパーティなどで卓上の中央にアレンジメントを設置する場合、どの席についても、アレンジメントがきれいに見えるスタイルが望ましいでしょう。
どの角度から見てもきれいに見える、横長のオーバルスタイルや、丸型の四方見(しほうみ)、ラウンドなどのスタイルがおすすめです。
一枚の絵のような おしゃれなボックスアレンジメント
青山花茂でも大人気のおしゃれなボックスアレンジメントです。
高級感溢れる紙製のボックスは、そのまま飾ればまるで一枚の絵のよう。サテンのリボンをかけたフラワーギフトは、おしゃれなサプライズを演出するのにもおすすめです。
人気のBOXアレンジメント<フルール・ドゥ・パティシエ(ガーネット)>
床置きタイプのアレンジメント
飲食店やオフィスにお祝いのアレンジメントを贈られる場合、背が高く存在感のある「床置きスタイル」も好評です。
床置きのアレンジメントの場合、正面から見て美しくまとまるようにアレンジします。
奥に背の高い、茎の長さを生かせる花材を配して高さを出し、手前は広がりを出す、三角形の形にアレンジするものが多いです。
モダンスタイルのアレンジメント
青山花茂のオンラインショップにはあまり掲載がありませんが、特別なシーンにモダンスタイルのアレンジメントをお作りすることも可能です。
例えば、アレンジメントなのに、中央に花束のように背の高い花を配したアレンジメントや、いけばなのような非対称のデザインで洋花と和花をまとめたもの、一種類の花だけでラウンド上にアレンジしたものなど、ご要望をお聞かせいただければ、ご用途とお好みにあわせたオーダーメイドの、世界に一つだけのアレンジメントをお作りします。
枝物を使ったスタイル
枝物を使ったアレンジメントは、青山花茂が得意とするスタイルです。お正月は松やボケ・白梅など、春は桜や桃、夏はドウダンツツジ、秋はユキヤナギや野バラなど、その季節の枝物を使ったダイナミックなデザインが魅力です。
フラワーアレンジメントのお手入れ 長持ちさせるコツ
フラワーアレンジメントは、贈るお相手にできるだけお手間をかけないように、という贈り主さまのお気持ちも込められたギフトです。
できるだけ長くアレンジメントを楽しむためには、少し気にしておきたい事柄もあります。
少しでも花を日持ちさせるには?
花を長持ちさせるためには、まずは、できるだけ早くセロファンなどのラッピング材を取り除きましょう。
また花は乾燥に弱いため、エアコンの風が直接当たらない場所で、直射日光を避けておくようにします。
アレンジメントは、適度な温度と湿度が保たれ、直射日光を避けた場所に飾ることが基本です。
しおれたり枯れてしまったりした花は、なるべく早く摘み取ることで、雑菌などの繁殖を防ぐことができます。時間がたって、花を摘み取り、アレンジのバランスが悪くなってしまったら、花を花瓶に移し替えてみても良いでしょう。
水やりの頻度はどのくらい? 目安は?
アレンジメントは、吸水スポンジ(オアシス)などに挿してあります。水やりは吸水スポンジが乾燥しないように、花器の中の水位を見ながら、水を足していきます。
一気に水をやると、溢れてしまうので、吸水スポンジに染み込ませるように水やりをします。
吸水スポンジは、一度乾燥してしまうと水を吸わなくなってしまいます。飾っている室内の様子にもよりますが、吸水スポンジが常に水に満たされているようにチェックしておきましょう。
切り花を長持ちさせるコツについては、こちらの記事もご参照ください。
関連記事:「切り花を長持ちさせる方法は?老舗生花店がお答えします」
お正月、ひな祭り、母の日、クリスマス、季節を彩るフラワーアレンジメント
お正月飾りの松、ひな祭りの桃、母の日のカーネーション、クリスマスのポインセチアなど、季節やイベントを彩るアレンジメントもあります。
贈り物としても、暮らしを豊かにするためにも、おすすめの花。
そして、贈り物としてもインテリアとして飾るにも、華やかさと手軽さを兼ね備えたアレンジメント。
青山花茂では、お客さまのライフスタイルに合う「花のある暮らし」をご提案いたします。お気軽にどんなことでもご相談ください。
この記事の監修者
株式会社青山花茂本店 代表取締役社長
北野雅史
1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。
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