5月初旬から夏の季節にかけて生花店で見かける、ドウダンツツジをご存知でしょうか。
ドウダンツツジは美しいグリーンの細やかな形状の葉をもつツツジ科ドウダンツツジ属の植物です。屋外では地植えされ生垣に使われていたり、フラワーアレンジではショップの店内やウィンドウに飾られていることが多い枝ものです。この時期のウェディングでは、会場装花にドウダンツツジを使うこともあります。
枝もの…と聞くと、「重い」「お手入れが大変そう」などのイメージがありますが、ドウダンツツジは比較的トライしやすく高い人気があります。ご自宅で過ごす時間が増えお部屋に花を飾るライフスタイルが一般的になっている昨今、ドウダンツツジをインテリアグリーンとして飾ったSNS投稿も増えていますね。
今回はそのドウダンツツジの特徴や飾り方、お手入れ方法をご紹介します。
目次
ドウダンツツジは、普通のツツジとは違う!?
枝ぶりの良さ、日持ちの良さから、スタイリッシュな枝ものとして夏場に重宝されるドウダンツツジ。私たち青山花茂本店も、この時期は活け込みなどでドウダンツツジをよく使用します。そんなドウダンツツジに関してまず気になるのは、その外見と名称です。
“普通のツツジ”と違う外見
ドウダン“ツツジ”という名前がついていますが、初夏に咲かせる白い花をご存知ですか?これを見ると、ロウト型に咲く花の“普通のツツジ”と明らかに違う外見であることに気づきます。
ツツジ科の植物の中で、大半を占める「ツツジ属」に属するミツバツツジやレンゲツツジ、サツキツツジ(サツキ)などは、5つの花びらがついたロウト型の花を咲かせます。
一方で、ドウダンツツジの釣り鐘型の白い花は“普通のツツジ”とは異なる印象。分類も、「ツツジ科ドウダンツツジ属」として、特殊な位置付けとされています。枝の広がりは“普通のツツジ”と似ているといえば似ていますが、花はむしろ同じツツジ科の「アセビ」に近い感じがします。
ツツジ属に属する品種数は2000種ほどに及ぶ一方、ドウダンツツジ属に属する品種数は10程度。ドウダンツツジは、ツツジ科ツツジ属の“普通のツツジ”とは異なるのに、ツツジという名称がついている、珍しい植物と言っていいと思います。
漢字表記が難しすぎる!
漢字表記は、「灯台躑躅」と「満天星躑躅」の2種類が知られています。あまりにも難読すぎますよね(笑)。
「躑躅」はツツジと読みます。「灯台」の由来には諸説ありますが、枝分かれの様子が「結び灯台」という灯り取りの器具に似ていることから「トウダイツツジ」とされ、「ドウダンツツジ」に訛ったという説があります。
「満天星」は、無数につく白い小さな花を満天の星に見立て、中国でドウダンツツジを「満天星」と呼んでいたことから、日本でも当て字として定着したといいます。私たちの業界では最近、ロマンチックな「満天星躑躅」の方がポピュラーな気がします。「満天星躑躅」をちゅうちょなく読める人は、かなりの植物ツウですね。
ドウダンツツジの花瓶活けが人気である理由3つ
近年、ドウダンツツジをお部屋に飾る方が増えていますが、取扱う私たちとしても、高い人気には納得です。なぜなら、装飾性に優れ、機能性も高い、コスパ最強の枝ものだからです。
ドウダンツツジの人気の理由1:涼しげな葉のビジュアルと、枝ぶりの良さ
これは言わずもがなですね、グリーンの細やかな葉がとても涼しげ。夏の季節にはさまざまなショップでも活け込みに使われているのを目にします。
ツツジ科の枝の特性ですが、枝がランダムに広がるので、花瓶に活ける際にも動きを出すことができ、初心者でも比較的活けやすい枝です。
ドウダンツツジの人気の理由2:水が汚れにくい
私たちはさまざまな枝ものを花瓶に活ける機会がありますが、花瓶の水が汚れていってしまうのも悩みの種です。桜などの花木(かぼく)は特に、花瓶の水が汚れやすいです。
一方でドウダンツツジはほとんど汚れることがなく、嫌な匂いも出づらい。その点も多くの方に支持される理由です。
ドウダンツツジの人気の理由3:圧倒的に日持ちする
やはり一番の理由はこれに尽きると思いますが、ドウダンツツジは「最も日持ちする枝もの」と言ってもいいかもしれません。お手入れと環境が良ければ、2週間ほどは葉が元気で日持ちしますし、場合によっては1ヶ月楽しんでいただけることも。
ドウダンツツジに慣れた方にとっては、他の枝ものの日持ちの短さにがっかりするかもしれませんが、ドウダンツツジが特別なのです!
季節ごとに変わるドウダンツツジの日持ちに注意
ドウダンツツジは、5月の新緑の季節から10月後半の紅葉の季節まで取り扱いのある枝ものですが、購入する季節によって日持ちが大きく異なることは実はあまり知られていません。
日持ちの長さのイメージは以下の図で表現することができます。
新緑の季節は、どのような植物でも葉が柔らかく日持ちしづらいもので、ドウダンツツジも例外ではありません。出始めの葉が柔らかい季節では、1週間ほどで元気が無くなってくる場合もあります。
業界用語では「固まってきた」と言われる6月頃から、ドウダンツツジの日持ちはどんどん長くなってきて、6月〜8月の夏の間は購入してから2週間〜3週間は元気で、環境とお手入れがよければ、1ヶ月ほどそのままの状態で楽しめることも。
日持ちが悪くなってくるのは、紅葉の季節。産地によっては9月下旬頃から少し色づいてきますが、色づき始めたら日持ちが1週間ほどになり、真っ赤に紅葉したドウダンツツジは、切り枝としては3日程度で散ってしまう儚いものです。
枝の長さに応じて飾り方はいろいろ
飾るだけで涼やかな夏らしい装飾になるドウダンツツジ。ご自宅やオフィス、ショップでの飾り方をご紹介します。
活けたい高さをイメージする
5月から10月頃までのシーズン、生花店では1メートルほどから2メートルほどまで、さまざまな長さで販売されています。
必要な長さにカットしてもらえるので、どれくらいの高さで活けるのか、イメージしてからオーダーすると良いでしょう。
一輪挿しとして使うのであれば、30cm〜50cm程度の長さで数本購入し、良い枝ぶりのところをカットするのがおすすめ。
テーブルの上の花瓶に大振りに活けるなら、100cm〜150cm程度の長さのものを数本購入するのが望ましいでしょう。
適切なサイズの安定性のある花瓶を用意する
ドウダンツツジは、左右に枝の動きを出すことでよりスタイリッシュに活けられることを念頭に、動きを出した時に転倒しないような安定性のある花瓶を選ぶと良いでしょう。
一般的には花瓶の高さとしては、最低でも枝の長さの1/3程度の高さが欲しいところです。逆に、花瓶のサイズが決まっているなら、枝の長さは花瓶の淵までの高さの2倍〜3倍となります。
また、高さがあっても安定感のない器は避けましょう。
購入してきた大きな枝から、20〜30cmほどの枝をとって一輪挿しとしても素敵です。
一種で活けても、花を合わせても素敵
もちろん、ドウダンツツジは一種で活けてもシンプルで素敵ですが、これに加えて1〜2種類の花や枝ものを合わせるのもおすすめです。
ドウダンツツジと同じ季節に生花店で見かける花や枝ものと言えば、以下のものがあります。
- 芍薬(4月下旬〜6月上旬)
- アジサイ(5月〜6月)
- アガパンサス(5月〜7月)
- ヒマワリ(5月中旬〜9月下旬)
- キキョウ(6月〜9月)
- リンドウ(6月〜10月)
- ヤマボウシ(4月下旬〜6月上旬)
- ブルーベリー(6月上旬〜6月下旬)
- スモークツリー (6月中旬〜7月上旬)
上の画像では、アガパンサスとドウダンツツジを活けてみました。淡い紫と清々しいグリーンは、初夏の装いを感じる色合わせです。
ご購入の際は、「合わせるのにオススメの花は?」などと相談するとよいでしょう。
大振りに活ける時は生花店に頼むことをオススメ
テーブルの上ではなく、大きな花瓶に活け込んだドウダンツツジも素敵ですよね。
天井の高い場所や、左右にスペースのある場所であれば、ドウダンツツジの枝ぶりの良さを最大限に発揮することができるでしょう。
水の入った大きな花瓶は重いですし、写真のような2メートル級のドウダンツツジとなると扱いもかなり大変なので、生花店に活け込みを依頼することをおすすめします。
ドウダンツツジのお手入れ方法
ドウダンツツジは元来、長持ちしやすい枝ではありますが、さらに日持ちをさせるには、花瓶に挿す際の水揚げとメンテナンスが欠かせません。日持ちをさせるためのお手入れ方法を説明します。
1. 切り口をカット
ドウダンツツジを購入してきたら、切り口が乾かないうちにカットしましょう。
枝は斜めに切り、水を吸い上げる面が多くなるようにします。
切れ味の良い刃物やハサミ(花バサミなど)を使いましょう。
2. 根元の外側を剥ぐ
表面積を増やす意味で、枝の外側を「剥ぐ(はぐ)」と、さらに水の吸いあげが良くなります。
初心者の方は難しいとは思いますが、ナイフを使って、野菜の皮をむく要領で行います。
青山花茂でも、ドウダンツツジだけでなく、水を吸い上げづらいカエデなどは、枝を割るのに合わせて「剥ぐ」ことも行なっています。
3. 上級者は「根元割り」
根元を割る方法(根元割り)で長持ちさせることができます。
先端から数センチほどハサミで十字を入れます。
硬い枝を割って、水の吸収を助けてやると花の長持ちにつながります。
太い枝の場合、剪定ばさみを利用する必要があります。
4. 折れている葉や形の悪い枝は切る
購入してきた枝を飾る前に、輸送中に枝の先端の方の葉が折れてしまっている場合もあります。
折れている葉や形の悪い枝は切ってから飾るようにしましょう。
5. 風通しの良い直射日光の当たらない場所に飾る
明るく、室温が高くなりすぎない場所を選びましょう。
枝は、急激な温度の上昇や強い風が苦手です。
強風や直射日光のあたる場所、冷暖房器具の近くには避けて飾ります。
6. 水換えは2〜3日に一度程度
ドウダンツツジは、水が汚れにくい枝ではありますが、夏場は水の中で細菌が増えやすい時期。細菌が増えると、切り口から水を吸い上げる力が弱まるので、2〜3日に一回の水換えが望ましいです。
また、水換えの際に、切り口をカットするとより良いでしょう。
葉がチリチリになったら切る
葉が終わりに近づくと、乾燥してチリチリになってきいきます。
こうなったら、イキイキした状態に戻すことは難しいので、その枝の根元から切りましょう。他の枝に水が行き届くことを助けることができます。
ドウダンツツジを使ったフラワーギフトをご紹介
これまで枝ものとして種類やお手入れ方法をご紹介してきましたが、ドウダンツツジは活けるだけでなくギフトにも最適です。青山花茂でご用意しているドウダンツツジを使ったフラワーギフトをご紹介します。
美しいグリーンの葉で清々しい印象を添えるドウダンツツジは、初夏のイベントやお祝いを季節感豊かに彩ることでしょう。
会場装花、ショップエントランスに 高さのあるアレンジメントを
パーティーや講演会などの会場装花や新規開店のショップには、華やかな彩りを添える花々は欠かせません。
「広がるように」や「高さを出して」というような動きをつけやすいドウダンツツジは、空間の広い会場やショップエントランスの装飾にぴったりです。
上の画像は、ピンクのオリエンタルユリや淡い紫のトルコキキョウに、ドウダンツツジの自然な枝ぶりを活かしてレイアウトした高さのあるアレンジメントです。都内自社配達地域のみのお届けの品物です。
ドウダンツツジと夏の花々を使ったフロアスタイルアレンジメント
こちらは、テッポウユリやハイドランジア、グロリオサなど、夏の花々をにぎやかに彩りよく配した床置きアレンジメント。枝もののフォルムをいかして、高さのあるアシンメトリーのフォルムに仕上げています。
フラワーギフトはご予算に応じておまかせいただけます
オンラインショップに掲載のない品物でも、ご予算をお伺いし青山花茂のフラワーデザイナーがご用途にふさわしくお作りします。
色や花材、フォルムなどのご要望、送り先様の情報など、ご注文の際にお伝えいただきますと、よりご希望に沿った品物をお届けできるかと思います。
開店祝い・開業祝い・開院祝いの花の贈り方については、こちらの記事も参照ください。
関連記事:「開店・開業・開院祝いに花を贈る 老舗生花店がおすすめする贈り方」
ご自宅への活け込みを承ります
青山花茂では、オフィスやショップはもちろんのこと、個人さまのご自宅への活け込みもご依頼承ります。
出張もしくはお電話でのカウンセリングを実施し、ご自宅のインテリアや間取りを確認。お住まいの空間に合う四季折々の花々や枝ものをコーディネートします。
詳しくは、青山花茂のフラワー・サービス、スペースコーディネートのページをご覧ください。
ご用命はお電話またはWebフォームから。ご相談のみも、どうぞお気軽に。皆さまのご利用をお待ちしています。
この記事を書いた人
株式会社青山花茂本店 代表取締役社長
北野雅史
1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。
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