春と秋のお彼岸にお墓参りに行かれる方も多いでしょう。お彼岸は、お盆や年末年始などと並んで、先祖供養の機会として日本人の文化に根付いています。ただ、お彼岸とはいつからいつまでを指すのか、お彼岸になぜお墓参りに行ったり、彼岸供養の法要を行うのか、明確にわかる方も少なくなってきているのではないでしょうか。
今回の記事では、お彼岸の意味や由来、そして、お彼岸のお供え花の選び方や贈り方のマナーなどをご紹介します。
目次
「お彼岸」はなぜ、春分の日と秋分の日?
お彼岸は、春分の日と秋分の日を基準にして、それぞれ前後3日間を含めた7日間です。
春彼岸は、毎年3月20日頃*の春分の日を含む前後7日間、秋彼岸は毎年9月23日頃*の秋分の日を含む前後7日間となります。(*春分・秋分の日は年によって異なります)
それではなぜ、春分の日と秋分の日が、「お彼岸」と呼ばれるようになったのか。それは仏教の考え方に由来があります。
春分の日と秋分の日は、昼と夜の時間がほぼ同じ。そして年2回のこの日には日の出はほぼ真東から上り日の入りはほぼ真西に沈むことは、理科の授業で勉強した通りです。
仏教では極楽は真西の方向の十万億土のかなたにあると考えられています。宗派により違いもあるようですが、日本ではその西方浄土のことを「彼岸」(ヒガン)と言い、人々が生きているこの世界を「此岸」(シガン)と言います。
太陽が真西に沈む春分の日と秋分の日は、真西の彼岸にいる先祖と最も通じやすいと考えられ、お彼岸の日には西に向かって、極楽浄土にいる先祖を供養したり、やがて浄土に転生できるように極楽浄土の阿弥陀如来(あみだにょらい)に祈ったりする法要が営まれるようになったといいます。真西のかなたに亡くなった方がいると思うと、春分の日・秋分の日の夕日が、より神秘的なものに見えてきますね。
その名の通り、9月の彼岸の時期に咲く花といえば彼岸花が知られていますが、彼岸の時期に一斉に咲くことで神秘的な何かを感じさせる点も、古来より日本人に愛されてきた理由といえます。
春分と秋分は、二十四節気の中でただ2つだけの国民の休日
季節とともに仕事をする私たち生花店は、暦を24等分した二十四節気(にじゅうしせっき)を意識することもしばしばなのですが、「春分」と「秋分」は、二十四節気の中でただ2つだけ、国民の休日に位置付けられています。これに日照時間が最も長い「夏至」と、最も短い「冬至」を合わせた4つは、誰もが知るポピュラーな二十四節気でしょう。
二十四節気は、太陽の動きによって季節が24等分されたものですが、それぞれの名称の由来を私の理解でタイプ分けするとこんな感じです。
暑さ寒さをシンプルに表現 | 「小寒」「大寒」「小暑」「大暑」 |
稲作の節目を表現 | 「穀雨」「芒種」「霜降」 |
四季の到来を表現 | 「立春」「立夏」「立秋」「立冬」 |
自然の移り変わりを表現 |
「雨水」「啓蟄」「清明」「小満」「処暑」 「白露」「寒露」「小雪」「大雪」 |
太陽の動きの大きな節目 | 「夏至」「冬至」「春分」「秋分」 |
夏至・冬至・春分・秋分はまとめて「二至二分」とも呼ばれ、二十四節気の中でも最も重要で基本となるものとして認識されています。そして、中でも春分・秋分は国民の休日として位置づけられた、いわば二十四節気の代表選手です。
政府は、春分の日は「自然をたたえ、生物をいつくしむ」日、秋分の日は「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ」日と定めています。日本人にとってのお彼岸の重要性がわかりますね。
お彼岸の時期、ご遺影や墓前には生花のお供えが欠かせないものです。仏教の宗派のほとんどでご本尊はじめ仏像や仏壇、墓前に花をお供えします。ご弔問に伺えない時や故郷のお墓参りに出向けない時にも、生花に思いを託してお届けするのはいかがでしょうか。
お彼岸の花贈りにはアレンジメントやミディ胡蝶蘭が定番
お彼岸に花贈りをされる際、お墓や仏壇の両脇に備えるご仏花(花束の形状)をお買い求めになる方もいらっしゃいますが、ご自宅用やフラワーギフトとしてお贈りする場合は、手間のかからないアレンジメントやミディ胡蝶蘭を選ばれる方が圧倒的に多い印象です。
お彼岸のお供え花でもっとも多く選ばれるのが、白を基調に淡いピンクや紫、ブルーを入れた優しい色合いのアレンジメントです。
白い八重咲きユリやカラー、白と淡い紫のトルコキキョウのアレンジメント
アレンジメントのほか、手間なく長く鑑賞いただけるミディ胡蝶蘭も、お供えのフラワーギフトとしてご注文が多くなってきた印象があります。
先方のご都合などでどうしても生花を送るのが難しいという場合は、水なしで生花のような風合いを楽しめるプリザーブドフラワーも選択肢です。
お彼岸の花贈りのマナー
お彼岸の花のお届け日や、花の色味・種類について問い合わせをいただくことも多いので、以下に簡単にお彼岸の花贈りで押さえておきたい点をまとめました。
1.お彼岸の花は彼岸の入りの前日か当日にお届け
お彼岸のお供え花を贈られる際、彼岸の入りの前日か当日にお届けすることをおすすめしています。2024年の春彼岸ですと、期間が3月17日〜3月23日ですので、彼岸の入りの前日の3月16日もしくは当日の3月17日にお届けされるのが良いかと思います。ご都合により花の手配が遅れた場合も、できれば中日(春分の日)の3月20日までにお届けされると良いでしょう。
2.お彼岸の花の色味は白のみにこだわらなくてOK
お彼岸に贈るアレンジメントを選ぶ際は、白のみの花である必要はなく、白を基調に少し色味を入れたアレンジメントを選ぶ方が多いです。ご逝去から間もない場合は別ですが、基本的にお彼岸のお供え花は、お盆やご命日などに比べて花色の制約は少ないように思います。ただ、色を入れる際は、白や淡い色の花を選ぶのが基本。濃すぎる色の花は派手な印象を与えてしまうため、避けたほうが良いでしょう。
3.お彼岸に選ぶべき花の種類
お彼岸に供える花の種類にも、特に決まりはありません。お供えには菊かユリ、という印象をお持ちかもしれませんが、その風習も薄れつつあります。かつて菊がお供えの花として定着していたのは、格調高く、邪気を払う力があると信じられていたこと、そして日持ちの良さが理由でした。ただ、今は白い菊を常備している生花店の方が少なくなってきたのではないでしょうか。ユリ(オリエンタルユリ)も、日持ちが良いことと、上品で美しい花姿からお供え花として頻繁に使われてされてきましたが、仏事だからと必ずユリを入れなければマナー違反というわけではありません。
上で述べたように「白に淡い色」というように色味を指定して生花店にお任せすれば、トルコキキョウ・カーネーション・ユリなどの日持ちの良い花を中心にアレンジメントや花束を作ります。また、色味に加えて、春彼岸・秋彼岸それぞれの旬の花を多く使って作るように依頼すると、お届け先で季節感を楽しめる花合わせとなるのでおすすめです。
そのほかに、故人が好きだった花やご家族が好きな花を選ぶのも良いでしょう。バラなどのトゲのある花は、お供えに不向きとされることがありますが、近年ではゆかりのある花であれば自由に選ぶ価値観も広がってきています。本来、お供えの花は故人を偲び、ご家族を思い、お気持ちを込めて贈るもの。形式にとらわれず自由に選んでいただいて問題ありません。
4.お彼岸は混雑が予想されるのでどうかお早めのご注文を
お彼岸の時期のご注文は生花店が大変混雑するため、2〜3日前には手配を済ませておくと安心です。青山花茂のオンラインショップなら、お届け日を指定して事前に注文ができますので、こちらも活用していただければと思います。ただ、もし注文が遅れてしまった場合でも、青山花茂では当日や翌日などお急ぎのお届けもお電話で承ることができる場合がありますので、どうぞお気軽にご相談ください。
お彼岸以外の機会も含めたお悔やみ・お供えの花についての詳しいマナーは以下の記事にまとめています。
>>【表で解説】供花、枕花、献花 葬儀・お悔みにまつわる花のマナー
彼岸供養の法要の花のご用命も、お気軽にご相談ください
青山花茂では、ご要望に応じて法要の場への花のお届けも承ります。
彼岸法要では、法要の際に本堂に飾るアレンジメントを一対、ご用意するのが一般的です。オンラインショップに掲載の品物のほか、故人のお好きだった花でお作りした、特別なアレンジメントを法要のためにご用意することもあります。彼岸供養の法要のお花もどうぞご相談ください。ご法要をなさる直前の、適切なタイミングでお寺やご自宅に花をお届けします。
ご先祖さまや亡くなられた方々へのお気持ちを込めてお贈りするお彼岸の花。
お客さまの深い思いを託された花をお作りしているという敬意をいだいて、青山花茂本店スタッフは心を込めて花束やアレンジメントをお作りしています。どうぞお気持ちにかなう花をお選びください。皆さまのご利用を心よりお待ちしています。
電話:03-3400-0871
FAX:03-3400-8711
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この記事を書いた人
株式会社青山花茂本店 代表取締役社長
北野雅史
1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。
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