少しでもお花に詳しい方は、春の季節だけ出会えるラナンキュラスという花をご存知でしょう。
日本名の「キンポウゲ」の方がよく知られているかもしれません。皆さまの記憶にあるかもしれない、小学校などの花壇で球根から育てたキンポウゲの丸い形の花ですが、ここ10年ぐらい生産量が増えてきたラナンキュラスは、花壇で見かけたキンポウゲよりも圧倒的に大輪で、花びらの枚数も多く、色や咲き方もバラエティに富んでいるのです。
今やチューリップやスイートピーなどの春の定番の花を凌ぐ存在感と言ってもいい春の花ラナンキュラスについて、生産者さんへの訪問記録とともにまとめました。
目次
品種改良により流通量が増えたラナンキュラス
ラナンキュラス属(キンポウゲ属)には500以上の種が存在しますが、私たちがラナンキュラスと呼んでいるのは、その中の一種、トルコやイランなど原産の「ラナンキュラス・アジアティクス」で、原種は5枚の花びらの一重咲きのものだそうです。
ラナンキュラス・アジアティクスをもとに16世紀ぐらいからアラブや欧州で品種改良が進んだそうで、園芸植物として豊富な品種が作り出されました。切り花としての流通が盛んになってきたのはここ10年ぐらいで、直径10センチを超えるような大輪系の品種や長持ちする品種が開発されてきたことが最も大きな理由と推定します。
小輪・中輪・大輪と、多様なサイズ
切り花で流通する通常のラナンキュラスは、サイズ別に分類されて流通しています。
規格は一定していないのですが、花を仕入れる側の感覚としては、直径5cm未満のものを小輪系、直径5cm〜10cm未満のものを中輪系、直径10cm以上のものを大輪系としている気がします。
これらはそれぞれ品種が異なるのではなく、同じ品種でも育て方や環境や切るタイミングが異なることによって花の大きさが変わります。写真で比較すると一目瞭然ですね。
これもラナンキュラス?変わり咲き品種を紹介
ラナンキュラスは、大きさの違いだけではなく個性的な咲き方の品種が多いことも特徴です。バラエティ豊かな見た目から、これもラナンキュラスだったのか、と驚くものもあるかもしれません。それら変わり咲き品種の一部をご紹介します。
ポンポン咲きラナンキュラス
フリルのような花びらが幾重にも重なる、手毬のようなシルエットのラナンキュラス。絶妙な色合いの花びらも魅力です。
アネモネ咲きラナンキュラス
アネモネのような見た目が特徴的なラナンキュラス。「ラナンキュラスシャルロット」など人気の高い品種もこの咲き方です。
ラナンキュラス・ラックス
スプレー咲きで、1輪でたくさんの花を楽しめるラックスシリーズ。花は一重から半八重で、花びらはシルクのようなツヤがあるのが特徴です。「ワックスのような質感のラナンキュラス」なので「ラックス」と名付けたと言われています。
モロッコ系ラナンキュラス
くしゅっとした花びらと、花の中央にのぞくめしべが個性的な雰囲気のラナンキュラスです。シリーズにはモロッコの都市名がついた品種もあります。
ラナンキュラスの人気を支える生産者グループ「フラワースピリット」を訪ねました
先ほど、ラナンキュラスの人気の背景には、大輪で花もちが良い品種が開発されたことが大きいという話に触れましたが、この品種改良をしたのが長野県の「フラワースピリット」という生産者グループ。先日、産地に訪問し、生産の様子を見学してきました。
生産者グループ「フラワースピリット」とは
フラワースピリットさんは、長野県松本市を中心に複数の花農家から構成された生産者グループで、ラナンキュラスやトルコキキョウ、カラーなどさまざまな品種を栽培し、全国に出荷しています。
いち早くラナンキュラスに注目し、美しく花もちが良い大輪ラナンキュラスを開発した生産者さんで、2012年にオランダで開催された花のオリンピック“フロリアード”では、「煌(キラメキ)」という大輪ラナンキュラスの品種が部門最高賞を受賞するなど、ラナンキュラスの魅力を世界に広めています。
「駄花」と呼ばれていたラナンキュラス
元々、ラナンキュラスは花が小さく花もちも良くない「駄花」と呼ばれており、フラワーデザイナーも使うのをためらう花でした。そんな中、フラワースピリットさんは宮崎県の育種家の方と協力して栽培方法を研究し、今までにはない大輪で花もちの良いラナンキュラスを作り上げました。
青山花茂でも、今や春のフラワーデザインには欠かせない花となったラナンキュラスですが、積極的に使うようになったのは大輪で花もちの良い品種が誕生した10年ほど前から。生産者の方々の努力のおかげで、自信をもってラナンキュラスを使ったフラワーギフトをお届けできるようになったのです。そして今や、ラナンキュラスの人気は、同じ春の花のチューリップやスイートピーを凌ぐほどとなりました。
高品質なラナンキュラスを作るために
ラナンキュラスのハウスを見学しながら、その品質の良さの秘訣を伺いました。
良質な花づくりのために手間を惜しまない
特に手間がかかるのが「芽かき」と呼ばれる作業。余分なわき芽を取り除くことで、養分が芽の生⻑に使われることを防ぎ、養分を集中させることができます。地道で骨の折れる作業ですが、より大輪の花を咲かせるためには大切な手入れです。芽かきを通じて作られた大輪の花を支える太くてしっかりとした茎も、水をよく吸い上げて花を長持ちさせることにつながっています。
その他にも、花の悪い病気が広まらないよう剪定バサミを熱したり、ハウス内の土を頻繁に総入れ替えしたりと、とても骨の折れる作業をされていました。見事な花を咲かせるために、膨大な時間をかけて、地道な努力を重ねているのです。
良い花を作るには手間やコストもかかりますが、良い花を作れば適正な価格で小売店に仕入れてもらうことができます。それにより、育種や生産プロセスの改革などにもお金と時間をかけることができる。その好循環がより良い花を生み出し続ける原動力になっているのだと思いました。
ノウハウを共有してより良い花を生み出す組織力
地域の生産者たちでグループを作る、というフラワースピリットさんの特殊な経営スタイルも、良い花を生み出し続けるために有効だといいます。生産の知識やノウハウを所属する花農家の方々で共有し合い、新しい品種や栽培方法の改良を重ねることで、より品質の良い花を作り上げています。
ラナンキュラスの栽培に適した気候
松本市の気候も理由のひとつ。朝晩の温度差、標高の高さ、日照時間は長いが雪は少ないなどのさまざまな条件が重なり、最高品質の大輪ラナンキュラスが作られています。さらに、各農家の標高の高低差を活かして、一番良い状態の花をより長い期間出荷できるように工夫をしているそうです。
ラナンキュラスを使ったフラワーギフト
青山花茂では、フラワースピリットさんのラナンキュラスをはじめ、最高品質のラナンキュラスを使ったアレンジメントや花束を今年も多数ご用意しています。
ラナンキュラスと桜の豪華なアレンジメント
淡いピンクやオレンジ、黄色のラナンキュラスに、スイートピーなども添え、春らしく軽やかな仕上がりです。濃いピンクの大輪バラが可憐な印象を添えています。明るい色とりどりの花々の後方には、桜をたっぷりと屏風のように配しました。
フラワーギフトとしてだけでなく、式典やパーティーの装花にもおすすめです。
淡いイエロートーンのラウンドブーケ
鮮やかな黄色のラナンキュラスに、クリーム色のカーネーション、白いチューリップやスイートピー、スカビオサなどを合わせたラウンドスタイルの花束。どなたにも喜ばれる明るい印象のフラワーギフトです。
春爛漫を感じるアレンジメント
淡いピンクの大輪ラナンキュラスやスイートピー、濃いピンクのチューリップなど、春の花々をたっぷりと配した季節感豊かなアレンジメントです。
優しい色合いでまとめたラウンドブーケ
淡いピンクのラナンキュラス、スイートピー、そして白いチューリップなどを合わせて、エレガントな印象に仕上げました。卒業や送別のシーンにもおすすめです。
こちらでご紹介した品物以外にも、ラナンキュラスを用いたフラワーギフトをご用意しています。
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ラナンキュラスのお取扱いは3月末まで
幾重にも重なるふんわりとした花びらが優美な春の花、ラナンキュラス。今年の春は、ゆっくりと時間をかけて、ラナンキュラスの花が開いてゆく姿を味わってみるのはいかがでしょうか。
良品のラナンキュラスの流通期間の関係で、青山花茂でのラナンキュラスを使ったフラワーギフトのお取扱いは1月から3月末頃までです。
誕生日や記念日、卒業のお祝いなど春のお祝いにもおすすめ。ぜひ、旬の花ラナンキュラスのフラワーギフトをお贈りください。
この記事の監修者
株式会社青山花茂本店 代表取締役社長
北野雅史
1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。
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この記事を書いた人
青山花茂本店
東京・表参道にある宮内庁御用達の生花店です。花一輪一輪を大切にお作りしたアレンジメントや花束、名人達が丹精こめて育てた蘭鉢や花鉢など、最高品質のフラワーギフトを全国へお届けしています。1904年の創業時より培ってきた、花の知識やノウハウを綴っていきます。
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