春や秋に比べて季節の花の選択肢の少ないこの時期、夏を代表する花として、ヒマワリの花束やアレンジメントのご注文を多くいただきます。
ヒマワリ好きの女性も多いですし、暑い夏にすくすくと太陽に向かって成長するポジティブなイメージもあります。花言葉も「憧れ」・「情熱」・「あなただけを見つめる」など良い意味のものが多く、誕生日祝いやプロポーズに選ぶ方も多い印象。
今回は、夏に人気の高い花、ヒマワリのご紹介をしていきます。
目次
ヒマワリの花は太陽を追いかけない
北米原産のヒマワリは、観賞用だけでなく、種子から油を採ったり、飼料として使われたりと実用性が高く、育てやすさも相まって世界中に広まりました。
ヒマワリ属の花は50種程度ありますが、原種はほぼ全て北米に分布しており、1600年代には大陸から日本に入ってきたとされています。
ヒマワリは漢字表記が「向日葵」であるように、太陽の方を向いて咲く花とされています。そう聞くと、ヒマワリの花が開花後も常に太陽を追いかけて動いているような印象を持ちますよね。確かにヒマワリ畑のヒマワリも、みんな同じ方向を向いている気がします。
しかし、開花した後はヒマワリの花の向きはほとんど動かないのをご存知でしたか?
ヒマワリの花が向いている同じ方向、実は「東」を向いていることが多いのです。ヒマワリが太陽を追いかけるのは花が咲く前の新芽が伸びる時期で、この時は実際に、先端部の葉の表面が太陽の方向を向くように茎をクネらせています。太陽の光を多く受けたいのです。
しかし、花が咲く頃になると茎が太くなって、太陽の方向に合わせて傾けることが難しくなり、東に固定されることが多いようです。東に固定される理由は、花の温度を上げてミツバチから目立ちやすくするためではないかという説があります。
理由は定かではありませんが、「開花したヒマワリは太陽を追いかけないで、向きが東に固定されていることが多い」これはヒマワリ畑を訪れた時に使えそうなトリビアですね。
ヒマワリ畑のような大輪のヒマワリは、次第に小型化した
園芸好きの方のお庭や、ヒマワリ畑で見るヒマワリは、大人の顔ほどもある大きな品種もありますよね。花が大きすぎて下を向いてしまう姿もよく見かけます。
超大輪のヒマワリがたくさん並ぶヒマワリ畑の景色は圧巻です。たまに、そのような超大輪のヒマワリをお探しのお客様がいらっしゃるのですが、実は現在は生花店では大輪モノの入手が難しくなっています。
生花店で超大輪のヒマワリの入手が難しい理由は「園芸用品種」と「切り花用品種」の違いによるものです。
現在流通しているヒマワリの切り花用品種はサカタ種苗さんの開発した「ビンセント系」とタキイ種苗さんが開発した「サンリッチ系」が大半を占めています。これら切り花用品種は、園芸用品種に比べると小型ですが、アレンジや花束に使いやすいサイズの花の大きさで、日持ちも飛躍的に改善されたため、生花店から高い支持を集めました。加えて生産効率や輸送効率も良いようで、花農家の皆さんが積極的に生産するようになったそうです。
小型の切り花用品種の台頭によって、超大輪の園芸用品種は10年ほど前に市場から姿を消したと言います。ごく稀に超大輪のヒマワリも出荷されますが、花の重さで下に垂れていることも多く、生花店では扱いづらいのが実情でしょう。
さらに歴史を辿れば、ヒマワリは戦後になって園芸品種として流通し始め、次第にいけばなやアレンジメントの花材としても取り入れられていきました。
その頃は、今のように日持ちのする切り花用品種が流通しておらず、むしろ「ヒマワリ畑に咲いているような」輪の大きいヒマワリも多かったと、青山花茂のベテラン社員が話していました。
生花店で取扱うヒマワリの全体像
生花店に入荷するのは切り花用品種として小型化されたヒマワリであることを説明しましたが、それらのヒマワリは、大きく分けて以下のような分類ができると思います。
まず、最も流通量の多い、花弁が黄色またはオレンジの“普通のヒマワリ”については、花の中央部分(中央の小花を“筒状花”と言います)の色が茶色いかグリーンかで、業界では「芯黒」「芯白」と分類されています。それに含まれないものとして、八重咲きのヒマワリも存在し、“普通のヒマワリ”だけでも大きく3分類できます。
さらに、花弁が黄色やオレンジではないものとして、白や茶色のヒマワリもあります。これらはとても流通量が少ない品種です。
そして、生花ではなくドライフラワーのヒマワリも少しですが流通しています。以下で写真とともに説明していきます。
花弁がオレンジまたは黄色のヒマワリ
中央が茶色いヒマワリ「通称:芯黒」
中央の筒状花が茶色い通称「芯黒」のヒマワリは、最も「よく見る」品種。その中でも、周囲の花弁(装飾花)の色はオレンジやレモンイエローのなど、多様に品種改良がなされています。
気付きにくいですが花が「横向き」か「上向き」か、でも品種が異なり、業界ではアレンジや花束で使いやすい「上向き」が好まれる傾向があります。
- 代表品種(花が横向き):サンリッチオレンジ、サンリッチレモンなど
- 代表品種(花が上向き):ビンセントポメロ、UPサンリッチオレンジなど
中央がグリーンの通称「芯白」
中央の小花(筒状花)がグリーンで爽やかな印象の通称「芯白」のヒマワリは、皆さんにとっては少し新しい印象のある品種群でしょうか。
「芯黒」のものと同様、花弁の色や花の向きでいくつか品種がありますが、「芯黒」よりも品種数は少ないです。
- 代表品種(花が横向き):サンリッチフレッシュオレンジ、サンリッチフレッシュレモンなど
- 代表品種(花が上向き):ビンセントクリアオレンジ、UPサンリッチフレッシュオレンジなど
八重咲きのヒマワリ
八重咲きの品種はいくつかありますが、中でも有名なのは“東北八重”と“ゴッホのヒマワリ”という品種。
八重咲きは、中央の小花(筒状花)を大きく咲くように改良したもの。“ゴッホのヒマワリ”は、ゴッホの「ヒマワリ」の作品にある花を作ろうと品種改良されたものだそうです。
- 代表品種:東北八重、ゴッホのヒマワリなど
花弁が白または茶色のヒマワリ
こんな色のヒマワリあるの、と言われることもある、珍しい品種たちです。白いヒマワリや、茶色のヒマワリは、流通量がとても少なく、青山花茂でも、オーダーがない限りなかなか入荷しないヒマワリ。
それでも近年は、次第に人気が高まっていると言えるでしょう。
- 代表品種:ホワイトナイトなど
- 代表品種:プロカットレッドなど
ドライフラワーのヒマワリ
「枯れ実のヒマワリ」はとても歴史が古く、近年のドライフラワーブームが来る前から、いけばな業界では以前から造形作品に重宝されてきた品物です。
ヒマワリが朽ちた姿は、秋の季節を感じさせる素材として使われてきました。近年では、装飾用のドライフラワーとして使用されているのを見ることがあります。
ヒマワリを長く楽しむ方法・飾り方
鮮やかな花色が美しく、眺めるだけで夏の気分を味わうことができるヒマワリ。
ご自宅で、ヒマワリの花を長く楽しむために、長持ちする質の良いヒマワリの選び方と活け方のコツをご紹介します。
長持ちするヒマワリを選ぶコツ
キレイな立ち姿
茎は真っ直ぐに伸びていて、花は(品種によって)横か上を向いているものを選ぶと良いでしょう。
ヒマワリは花が大きいため、茎が曲がったり花が下を向いたりしやすい性質がありますが、品質の良いものはしっかりした軸が花を支えています。
花びらにハリがある
時間が経つと、花びらは次第に丸く萎れたようになります。花びらがピンとしたハリがあるものを選びましょう。
中心にある管状花のつぼみが多い
ヒマワリの花の中心部分は、管状花という小さな花が集まってできています(外側の黄色やオレンジの花びらは“装飾花”)。管状花は外側から中心へと咲き進んでいくため、中央にある管状花のつぼみが多いものを選ぶと長く楽しむことができる傾向があります。
また、中心部分に花粉がついていないこと(=開花していない)も見極めのポイントです。
長持ちするヒマワリの活け方
真夏の暑い時期に咲くイメージから、長持ちすると思われがちなヒマワリですが、切り花の中ではそこまで長持ちする花ではありません。
気温の高い時期でも、できるだけ長くヒマワリの花を楽しむためのコツをご紹介します。
買ってきた後はたっぷりの水に挿す
ヒマワリを買ってきた後は、なるべく早めに水切りをして深く水を張った花瓶に挿しましょう。ヒマワリは深めの水に入れることで茎の中の水圧が上がり、水をよく吸い上げてくれます。(水に入れる時間は3時間〜半日程度が目安です。)
浅めの水に挿し替えて、こまめな水換えを
しかしながら、ヒマワリの茎は水に浸かっていると腐りやすいため、長時間飾る際には水の入れ過ぎに注意しましょう。夏の暑い時期は特に、こまめな水換えも必要です。
季節感を出しやすいヒマワリの活けこみ
ショップやオフィスでの活け込みでも、茎の長いヒマワリが活躍します。
ヒマワリのみで活けても素敵ですし、他の花やグリーンを合わせてもスタイリッシュに仕上げることもできます。
ヒマワリを使ったフラワーギフト
ヒマワリの明るく親しみやすい花姿は多くの方に好まれおり、鮮やかで明るい花色は、夏の花贈りに最適です。ヒマワリを使ったフラワーギフトは、青山花茂ならではの上品なデザインに仕上げています。
ヒマワリのみでお作りする色鮮やかな花束
お相手の年齢やゆかりの数など、お好みの本数をお選びいただけるヒマワリのブーケ。品質の高い芯白と芯黒のヒマワリをバランスよく合わせた、シンプルな仕立てです。
鮮やかな黄色が印象的なアレンジメント
黄色のヒマワリ2種をダイナミックにレイアウト。白いカラーやオレンジのスプレーバラ、トルコキキョウなどを加え、明るく仕上げたアレンジメントです。
2種のヒマワリを使用したロングスタイルのブーケ
黄色い2種のヒマワリを主役に、カラーやオレンジのスプレーバラなどをたっぷりと贅沢に。ナチュラルなリーフのあしらいで清々しさを添えたブーケです。
スタイリッシュなヒマワリのアレンジメント
明るい黄色のヒマワリに、淡いグリーンのスプレーマムやトルコキキョウ、ブルーのエリンジューム。白いアンスリウムをポイントに、爽やかな調和を感じるスタイリッシュな花色使いのデザインです。
ヒマワリとスモークツリーのアレンジメント
東北八重とプロカットレッドの2種類のヒマワリに、スモークツリーやブルーベリー、グリーンのリーフを合わせたアレンジメント。初夏を感じる爽やかな色彩が魅力です。
夏の花、ヒマワリをお楽しみください
夏の象徴のような花、ヒマワリ。その歴史や豊富な種類に触れることで、よりいっそう興味をもっていただけたのではないでしょうか。
青山花茂でのヒマワリのお取扱いは5月中旬頃から9月下旬頃までです。
ぜひ、時期を逃さずお楽しみください。
この記事を書いた人
株式会社青山花茂本店 代表取締役社長
北野雅史
1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。
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