毎年3月3日は、ひな祭り。桃の節句にあたり、女の子の幸せを願って、雛人形や、可愛らしいピンク色の花を咲かせる花桃(はなもも)を飾る習慣がありますね。
青山花茂でも、毎年この時期が近づくと、桃の花を使ったアレンジメントや、桃と菜の花を合わせた花束のお問い合わせをいただきます。
今回は、桃の花や桃の節句にまつわるあれこれをご紹介していきます。
目次
ひな祭り(桃の節句)の時期に桃の花は咲いていない?
公園や学校などに植えられている桃の木に着目すると、平年並みなら3月後半から4月上旬に濃いピンク色の八重咲きの花を咲かせていることに気づきます。
一般に植えられている桃の品種は多くが「矢口」と呼ばれる品種の花桃で、実はつかないが花付きが良い、切り花用に品種改良をされた桃です。
品種改良によって少しは開花期が早くなった花桃ですが、世間が花桃を必要とする3月3日のひな祭りには、まだまだつぼみの状態です。花桃の開花期とひな祭り(桃の節句)が1ヶ月もずれているのは、旧暦の3月3日が、現在の4月上旬だったことに由来します。
ひな祭り(桃の節句)までに桃を咲かせるために
明治期に暦が変わり、花桃を1ヶ月も早く咲かせる必要に迫られた生産者さんは、早めに枝を切って「室(むろ)」で温める、促成栽培の仕組みを完成させました。現在でも、「室」を使って花桃の開花調整をする生産者さんが多くいます。
温度と湿度を一定にした地下の室(むろ)で温める
3月3日のひな祭りに間に合わせるために、桃を切り始めるのは1月10日頃。数十本単位に束ねた桃を常温の倉庫で数日、十分に水を吸わせます。その後、桃の束を室温28℃前後・湿度60%の室(むろ)に貯蔵し、つぼみがほころび始めた頃に出荷するのです。
室(むろ)は多くが地下の真っ暗な部屋で、光が届かないことも、花色を鮮やかにするために重要だと聞きます。「麦ぬか」を発酵させた温度によって温めていたかつての温度調整の方法は、現在ではヒーターに代わりましたが、現在も「早めに切って温めて早く咲かせる」という促成栽培は行われており、2月中頃には花桃が市場に出荷されています。
川崎市宮前区は花桃の一大生産地
現在は住宅地として知られる神奈川県川崎市宮前区は、100年以上前から続く日本有数の花桃の生産地であることをご存知でしょうか。特に宮前区東部の「馬絹(マギヌ)」地域を中心として、今もたくさんの花桃の生産者さんがいます。
前述した桃の促成栽培を確立させたのも馬絹の生産者さんで、青山花茂本店とは明治時代から今に至るまでお取引があります。
ひな祭り(桃の節句)にはなぜ桃の花を飾るのか
五節句のひとつ、桃の節句
生産者さんが手間暇をかけて促成栽培し、3月3日に咲くように育てた桃の花。そもそも3月3日のひな祭り(桃の節句)では、なぜ桃の花を飾るのでしょうか。
桃の節句は、正式な呼び名を「上巳(じょうし)の節句」と呼び、年間5回ある「五節句」のうちの1つです。五節句は、奇数が並ぶ日は縁起の良い日とした中国の考え方が、奈良時代に日本に伝えられたものです。
五節句一覧表
日付 | 正式名称 | 別名 | 植物 | その他習慣 | |
1月7日 | 人日の節句 (じんじつ) |
七草の節句 | 春の七草 | 七草粥 | |
3月3日 | 上巳の節句 (じょうみ/じょうし) |
桃の節句 | 桃 | 雛人形 | |
5月5日 | 端午の節句 (たんご) |
菖蒲の節句 | 菖蒲 | 鎧兜・五月人形・鯉幟 | |
7月7日 | 七夕の節句 (たなばた/しちせき) |
星祭 (笹の節句) |
竹 | 七夕飾り | |
9月9日 | 重陽の節句 (ちょうよう) |
菊の節句 | 菊 | 菊酒 |
桃の魔除けや厄除けの効果が由来?
桃は、古来から中国では魔除けや厄除けの効果がある果実とされていたのは有名な話ですが、中国から日本に伝来した直後と思われる弥生時代の遺跡からも大量の桃の種が見つかっているそうです。また、万葉集などでも桃の歌があります。かなり古い時代の日本でも貴重なものとして扱われていたわけですね。
雛人形を飾ることや、花桃を飾ることなど、3月3日の「上巳の節句」の行事の成り立ちについては諸説ありますが、(1)当初はお祓いのために人形を川に流したり人形を飾ったりする風習が定着していたが、(2)いつしか女子の健康や厄除けを願う祭りとなり、(3)桃の花を浮かべた酒を飲むなどする「桃の節句」となった、という変遷は間違いなさそうです。
女子のための節句となったきっかけは、聖徳太子がそれを命じたという説もありますし、江戸時代に端午の節句(5月5日)が男子のための節句となった後にそれに対を成すものとして上巳の節句を女子の健康や厄除けを願う祭りとした、という謂れもあります。
旧暦3月3日の頃に花が咲き、古来より邪気を払う効果があるとされていた桃は、女子の健やかな成長を祈るお祭りにふさわしい花だったのでしょう。そして今では桃酒を飲む風習は薄れ、桃の花を飾るようになったわけです。
さまざまな種類の桃の花
先ほどもお伝えしたように、公園などに植えられている花桃は、「矢口」と言われる濃いピンク色の品種が多く、花桃として生花店に入荷する品種も大半が「矢口」です。ただ、桃はピンクだけでなく、濃い赤や白い品種の桃もあります。
また、同じ幹からピンクと白の両方が咲く「源平桃(げんぺいもも)」という品種や、枝が曲がって咲く「枝垂れ桃(しだれもも)」などの品種もあり、流通量は少ないですが、いけばなの展覧会などではそれら希少品種を探してお届けすることもあります。
さまざまな品種の桃を植えてある各地の桃の名所では、3月下旬〜4月上旬に訪れれば桃の品種のバラエティを楽しめるかと思います。
初節句やひな祭りに贈りたい、桃の花のフラワーギフト
3月3日が近づくと、桃の花を使ったフラワーギフトのご注文をいただくことが多くなります。ひな祭りに、おじいさまやおばあさまから桃の花を使ったアレンジメントを送られるのはいかがでしょう。
初節句を迎えられる女の子のお宅では、雛人形を飾られると思いますが、花桃と菜の花を花瓶に入れ、雛人形の横に置いていただくのも素敵です。
ひな祭りにぴったりの小ぶりなアレンジメント
花桃に、菜の花、ピンクのチューリップ、そして淡いパープルのスイートピーなど。古来ゆかしい雛の節句・おひなさまの桃を春の花々で囲んだ、小ぶりなアレンジメントです。
桃の花を楽しむシンプルな花束
ひな飾りとともに飾っていただきたい桃と菜の花の花束。伝統的な花の取合せが、桃の節句を華やかに彩ります。季節の花のギフトとしてもおすすめです。
桃の花を使った豪華なアレンジメント
花桃に、濃いピンクの大輪バラ、淡いピンクの大輪ラナンキュラス。さらに淡いピンクのスイートピーとユキヤナギを背景のように添えたデザインに仕上げました。高さのある豪華なアレンジメントは、パーティーやイベントの演出にもぴったりです。
花桃の枝を使った活け込みも承ります
アレンジメント・花束や切り花としての販売だけでなく、長い桃の枝を使った活け込みを実施させていただくこともあります。イベントやショップエントランスなどはもちろん、ご自宅への活け込みのご相談も可能ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
桃の花のお取扱いは2月中旬から3月初旬頃まで
今回は、桃の花やひな祭り(桃の節句)についてご紹介しました。
桃の花は、娘さんや、姪御さん、お孫さんの幸せを願ってのご贈答はもちろんのこと、季節の花のプレゼントとしてもおすすめです。
お取扱いは2月中旬から3月初旬頃までの短い期間です。どうぞ時期を逃さず、お楽しみください。
お電話、オンラインショップから、皆さまのご注文をお待ちしています。
電話:03-3400-0871
FAX:03-3400-8711
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この記事を書いた人
株式会社青山花茂本店 代表取締役社長
北野雅史
1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。
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