トルコキキョウという花をご存知でしょうか。
トルコキキョウは北米を原産とする花で、日本でも品種改良が盛んに行われ、白、ピンク、青紫、淡い紫、淡い黄色、淡いグリーンなど多彩です。花色だけでなく、幾重にも重なるたっぷりの花弁やフリルのついた花弁など、花姿が優雅で上品な雰囲気を持つことから、今日ではフラワーデザインに欠かせない存在となった花です。
今回はそのトルコキキョウの歴史や特徴、名前の由来について注目してみました。
目次
トルコキキョウの歴史
原産地のアメリカからイギリスへ
トルコキキョウは、リンドウ科ユーストマ属の多年草もしくは一年草です。海外では学名の 「Eustoma(ユーストマ)」と呼ばれています。ユーストマはギリシャ語で、良い「Eu」、口「Stoma」の意味があり、その美しい花姿から名付けられたと言われています。
原産地はアメリカ西南部、テキサスからメキシコにかけての地域。19世紀頃にイギリスへ持ち込まれ、園芸家たちによって改良が進められました。
トルコキキョウの品種改良は現在は日本で盛んに
本格的に品種改良が進んだのは戦後の日本で、今では多くの品種が日本で生産されています。もともと海外からもたらされたトルコキキョウですが、品種改良は日本がリードしています。
日本で最初にトルコキキョウの生産が始まったのは長野県だと言われています。国内屈指のトルコキキョウ農家が集積しており、品種改良が盛んで、新品種の展示会も行われています。なぜ長野県にトルコキキョウ農家が?どのような環境で、どのように栽培されているのか?
以前に青山花茂スタッフが産地を訪問した際のことを記事にまとめています。下記リンクより、ぜひご覧ください。
トルコキキョウ?ユーストマ?リシアンサス?名前の由来
英名では学名の「ユーストマ」の表記ですが、日本では和名の「トルコキキョウ」または「トルコギキョウ」と呼ばれています。「リシアンサス」とも呼ばれるようですが、こちらは19世紀頃イギリスへ持ち込まれた時に当時の学名で名付けられたようです。
呼び名が3つありますが、すべて同じ花のことを指しています。
トルコキキョウの名前の由来
原産国がトルコではなく、そしてキキョウ科の植物でないのに、なぜ「トルコキキョウ」と呼ぶのでしょうか?
これには多くの説があるのですが、インターネットなどで調べると以下の3つがヒットします。
- 一重咲きの花がキキョウに似ていることから名付けられた説
- 花やつぼみがトルコのターバンに似ているという説
- トルコ石の色に連想して名付けられたという説
どれも本当のように思えてしまいますね。一体どの説が一番有力なのでしょうか。
青山花茂のベテランデザイナーに、上記の3つの説を敢えて伏せた上で質問してみました。すると、こんな答えが返ってきました。
- 日本に入ってきた当時は一重咲きの濃い紫の品種しかなかった。それが日本の花のキキョウに似ていた
- その一重咲きの品種のつぼみは渦をまいたような形状をしており、それがトルコのターバンのように見えた
以上の2点から「トルコ+キキョウ」で、「トルコキキョウ」という和名がついたのでは、ということでした。
デザイナー曰く、当時は学名などが広く認識されていなかったそうで、見た目の印象で名付けたのかもしれませんね。トルコ石のターコイズブルーの色から連想する説もそうですが、当時のおおらかな時代背景によるものでしょう。
このような名残もあって、日本では現在も「トルコキキョウ」と呼ばれることが多いようです。
トルコキキョウの今昔から見る特徴
かつては夏の花だったトルコキキョウ
今でこそ生花店で一年中見かけることできますが、露地(=屋外)のトルコキキョウの主な開花期間は7月から9月。そう、かつてトルコキキョウは夏の花でした。
生花店の現場では、暑さに弱いカーネーションの代わりにトルコキキョウを使っていました。夏の時期に花持ちの悪い花は使わず、トルコキキョウをメインの花としていたのです。
一方でトルコキキョウは寒さに弱いため、青山花茂では冷蔵庫に入れずに、常温で管理していたそうです。
今では季節問わず出荷されるように
暑さに強く寒さに弱い。そのようなトルコキキョウの特性から、冬の出荷はありませんでしたが、栽培技術の向上と品種改良のおかげで、品種全般が耐寒性を持つようになり、通年で出荷されるようになりました。
毎年新しい品種が開発されています。ピンク色ひとつにしてもオレンジがかったピンクであったり、ベージュピンクであったり、さまざまな花色があります。このような絶妙な花色の違いから、フラワーアレンジの繊細なデザインの表現にも重宝され、日持ちの良さもあって、フラワーデザイナーにとっては扱いやすい花材となりました。
「トルコキキョウは、昔(1990年代)は花持ちが悪かった、せいぜい2日くらいで終わってしまう。」と前述のベタランデザイナーは言います。「八重咲き品種が生まれて、その後品種改良を重ね日持ちがよくなった」、とも。
私たちが一年において、さまざまな花色のトルコキキョウを長く楽しめるのも、生産者さんによる長年の努力の賜物なのです。
現在のトルコキキョウの特徴
これまでトルコキキョウの歴史について、ご説明してきました。現在のトルコキキョウの特徴をまとめると、このような点が挙げられます。
- 花持ちがいい
- 水があがりやすい(水を吸いやすい)
- 一年中手に入る
- 花姿が優雅で気品がある
- 花の大きさ、咲き方、花色が豊富
次の章では、トルコキキョウについてよくある質問を解説していきます。
咲き方は何種類?つぼみは咲くの?よくある質問をご紹介
トルコキキョウにはどんな咲き方がある?
トルコキキョウの花茎は小輪・中輪・大輪に分類され、さらに花色もとても豊富で(なんと白い花色だけでも20種類以上!)、品種名を掲載するとあまりにも膨大になってしまうため、この記事では咲き方にフォーカスして詳しくご紹介していきます。
トルコキキョウの咲き方は、3種類あります。
一重咲き
花弁が一重ですっきりとした見た目、可憐な印象の一重咲き。
一重咲きでも小輪・中輪・大輪とありますが、どの輪も八重咲き品種と比べるとそれほど大きくなく、可愛らしい見た目です。
半八重咲き
花弁の数が増え、上品な見た目の半八重咲き。
一重咲きのような可愛らしさも持ち合わせており、アレンジメントや花束に用いる際も、主張しすぎすぎないその印象から、他の花々とも合わせやすいという特徴があります。
八重咲き(フリンジ咲き)
幾重にも重なるたっぷりの花弁、優雅で華やかな花姿の八重咲き。多いものでは花弁の数が30枚を超える品種もあるのだそうです。
花持ちが良く、花弁に厚みがあり傷つきにくいため、青山花茂では豪華なアレンジメントや花束でよく用いられています。
咲き方だけで、花への印象がそれぞれ違いますね。
特に八重咲きは、“フリンジ咲き”と呼ばれるフリルの入った花弁を持つ品種が市場のほとんどを占めています。一重咲きや半八重咲きでも、フリルが入っていればフリンジ咲きと呼べるのですが、今や「八重咲き=フリンジ咲き」のイメージが定着するほどです。
トルコキキョウ、と言えばこのフリルのついたたっぷりの花弁を持つ、八重咲きを思い浮かべる方がほとんどでしょう。
切り花のトルコキキョウのつぼみは咲くのか?
よくお客さまから「このグリーンの小さなつぼみも咲きますか?」というご質問をいただくのですが、結論から言ってしまうと、切り花のトルコキキョウの小さなつぼみが開花することはほぼありません。切り花として収穫してしまうと、つぼみを開花させるだけの力は残っておらず、小さくて硬いつぼみはそのまま萎れていきます。
トルコキキョウのつぼみは、多くが白またはライトグリーンの色をしています。つぼみと花々との配色のコントラストをいかしたあしらいは、おしゃれな印象を与えますね。そんな風情のあるつぼみも含めて、トルコキキョウという花を楽しんでいただけたらと思います。
トルコキキョウを使ったフラワーギフト
青山花茂オンラインショップでは、トルコキキョウを使った花束やアレンジメントなどのフラワーギフトをご購入いただくことができます。
トルコキキョウは通年でご用意しており、花持ちがよく、美しい花姿を比較的長く楽しんでいただけるため、贈り物にもおすすめです。
深い青紫のトルコキキョウを使った花束
花束<ノクターン>
※この花束のお取扱い期間:3月中旬から8月下旬まで
深い青紫のトルコキキョウをひとまとまりに、淡いグリーンのハイドランジアとのコントラストが目を引きます。白いカラーとクレマチスがのびやかに花咲いて、ノーブルな雰囲気を感じさせるデザインのロングスタイルの花束。男性へのフラワーギフトにも選んでいただける花色合わせです。
淡いピンクのトルコキキョウとカサブランカの豪華なアレンジメント
白い大輪ユリ・カサブランカが自然な花向きで咲き誇るさまを引き立てるように、淡いピンクのトルコキキョウやグリーンのリーフを巧みに配置したデザインです。フリルのついた花弁のトルコキキョウが優雅で柔らかい印象を添えています。
淡い紫のトルコキキョウと季節の花を合わせた花束
芍薬の花束<ビジュー>
※この花束のお取扱い期間:4月下旬から6月上旬まで
初夏が旬の花・芍薬(ピオニー)。濃いピンクと淡いピンクの2種類の芍薬を引き立てるように、淡い紫のトルコキキョウや白いスプレーバラを合わせた、ラウンドスタイルのブーケです。
本来のシーズン到来 トルコキキョウをぜひお楽しみください
今回はトルコキキョウの歴史や名前についてご紹介しました。
花色が多様なトルコキキョウは、ギフトのみならずさまざまなシーンで重宝しています。画像の花束のような白・グリーンの配色は近年若い方を中心に人気で、「清楚」や「成長」や「希望」といったポジティブなイメージを与える組み合わせ。こちらは結婚式を控えるご新婦さまよりご依頼いただいた、ブライダルブーケです。
主役としても脇役としても活躍の場の多いトルコキキョウ。これからの時期は気温も上がりますが、トルコキキョウにとっては旬のシーズンです。水切りや水換えなどの日々のお手入れをしっかりすれば、1週間以上は楽しめるでしょう。
皆さまもぜひ、トルコキキョウをお楽しみください。
この記事を書いた人
青山花茂本店
東京・表参道にある宮内庁御用達の生花店です。花一輪一輪を大切にお作りしたアレンジメントや花束、名人達が丹精こめて育てた蘭鉢や花鉢など、最高品質のフラワーギフトを全国へお届けしています。1904年の創業時より培ってきた、花の知識やノウハウを綴っていきます。
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