花弁が反り返るように咲き、つる性のため茎に動きがある個性的な花姿のグロリオサ。
夏が最盛期の花ですが、近年ではハウス栽培で年間を通じて入手が可能となり、アレンジメントや花束に頻繁に使われる花となりました。花色もポピュラーな赤のほか、黄色やピンクなど、多彩に流通しています。
今回は、グロリオサの魅力を掘り下げていきたいと思います。
目次
グロリオサとはどんな花?
姿はヒガンバナに似ているが分類は全く異なる
グロリオサについて、花弁が反り返るように咲くことや、赤色の花が最も多いことから、お客さまからは「ヒガンバナみたいな花」とコメントいただくこともあります。
確かに花の咲き方は似ているのですが、グロリオサはヒガンバナ科ではなくイヌサフラン科に属します。原産地もヒガンバナは中国原産なのに対して、グロリオサはアフリカや熱帯アジアとされています。日本では自生しているヒガンバナを見かけることができますが、近代になってから輸入されたグロリオサの姿を見かけることはまずないでしょう。
グロリオサは背がとても高い、つる性の植物
実際に生育されているグロリオサを見ると、花の高さ(花丈)に驚かされます。グロリオサはとても長く茎を伸ばし、2mの高さに達します。品種によっては、3mもの高さになることも。対してヒガンバナは、ご存知の通り高さに真っ直ぐの茎を伸ばし、腰ほどの高さですよね。
さらにグロリオサの葉をよく見てみると、葉の先端に巻きひげがあるのが分かると思います。この巻きひげを他の植物に絡みつかせながら成長する不思議な特性を持っています。花丈が高くなると倒れやすくなりますが、つる性の特性を活かしてより高く成長することが可能なのです。アフリカや熱帯アジアなどの環境で、効率よく日差しや水分を得られるように進化し、この姿になったそうです。
ヒガンバナと似ているようで、特性や花姿が全く違うグロリオサ。そんな両者に共通している点があるとすれば、「毒がある」ことでしょうか。次の項でご説明します。
グロリオサには毒がある?
グロリオサの毒は花業界では有名です。主に地下茎に毒が含まれており、それが山芋に似ていることから、数年に一度、誤食されるニュースを目にします。ただ、地下茎を食べなければ人体には大きな影響はなく、生花店に並ぶ切り花のグロリオサは地下茎と切り離されているため、恐れる必要はありません。
ヒガンバナも同じく球根に毒があります。公園や群生地で鑑賞する分には何の問題ないかと思いますが、知っておくとよいでしょう。ヒガンバナについて詳しくは下記の記事でご紹介しています。ぜひご覧ください。
関連記事:「彼岸花(ヒガンバナ)の魅力 〜美しい花には毒がある?〜」
グロリオサの花言葉は「栄光」「華麗」など
グロリオサという名前は、ラテン語の「見事な」という意味を持つ、[gloriosus]に由来しています。英語では「Glory lily(グローリーリリー)」あるいは「Flame lily(フレイムリリー)」とも呼ばれ、当時グロリオサを発見した人々がゴージャスな花姿に魅了された・花開くさまを燃えるような炎になぞらえてそのように呼んだことがわかります。
それもあってか、グロリオサの花言葉には「栄光」・「華麗」・「燃える情熱」・「勇敢」などのポジティブで明るいキーワードが並びます。贈答用のアレンジメントや花束に使うのに、ふさわしい花言葉を持っていますね。
多様な花色があるグロリオサ
国内でのグロリオサの生産は、高知市三里が有名です。国内流通量の半分以上を高知県産グロリオサが占めるほどです。なぜそれほどのシェアを誇るのかというと、高知市三里が
- 水はけの良い砂地であること
- 日照量の多さや温暖な気候などが、グロリオサの生育に適しているとのこと
が挙げられます。
現在は、本来の開花時期の夏だけでなく、年間を通じてハウス栽培のグロリオサが出荷されています。
三里で品種改良された「ミサトレッド」や「サザンウィンド」という品種は、赤いグロリオサの中でも非常に知名度の高い品種です。また、グロリオサの花色は赤だけでなく、他にも多様に存在しています。
色別の流通量としては、多い順から赤>黄>オレンジ>ピンク>白の印象です。
特にピンクや白は年間を通じて手に入れることは難しいので、青山花茂のバイヤーやフラワーデザイナーも出会えた時は嬉しくなるようです。
皆さまも、もし生花店で見かける機会がありましたら、花色にも注目してみてください。
グロリオサを使ったフラワーギフト
グロリオサの花や茎がランダムに向いているような枝ぶりは、使う難しさもありますが、アレンジメントや花束に動きを出してくれる花材として重宝しています。
青山花茂オンラインショップでお取扱いしている、グロリオサを使ったフラワーギフトをご紹介します。
赤のグロリオサとユリを使った花束
主役級の花々ばかりの、両手で抱えるほどの大きさのロングスタイルブーケ。赤い大輪バラとグロリオサに、白いカラーと大輪ユリ・カサブランカ。スタンダードな紅白の花合わせを、アンティークな色調のハイドランジアと細やかなリーフにより、スタイリッシュかつゴージャスに仕上げています。
黄色のグロリオサとカラーやハイドランジアを使った豪華なアレンジメント
アレンジメント<アマルフィ>
※こちらのアレンジメントのお取扱い期間:6月上旬から9月中旬まで
鮮やかな黄色いカラーやグロリオサ、白いデンファレ、淡いオレンジのトルコキキョウ、淡いグリーンのハイドランジアなど、明るく柔らかいトーンの花々が豊かに咲いた豪華なアレンジメントです。
お祝いのシーンにふさわしい、上品で晴れやかな仕上がりです。
秋の花々とグロリオサ合わせた季節の花の定期便
秋のはじめにお届けした、青山花茂の花のサブスク「季節の花の定期便」です。
秋を象徴するススキやワレモコウに、ブラウンのシンビジューム、グリーンのアンスリウムやリーフを合わせて、季節感豊かな趣きのある仕上がりに。伸びやかに咲く淡い黄色のグロリオサが、優しい明るさを添えています。
グロリオサの活け込み
動きのあるグロリオサは、ご希望があれば活け込みで使う場合もあります。グロリオサだけで活けても素敵ですし、他の花と組み合わせても映える花材です。
グロリオサの切り花のお手入れ方法
グロリオサの切り花のお手入れは、他の花と同様、毎日の水換えと水切りが基本です。下記の記事を参考に、お手入れをしてみてください。
参考:「切り花を長持ちさせる方法は?老舗生花店がお答えします」
ここからは、青山花茂のフラワーデザイナーに聞いた、より専門的なお手入れ方法もご説明します。
グロリオサの蕾を咲かせるには?
切り花のグロリオサは、枝分かれした先端に花や緑色の蕾がついています。お客さまからは「この蕾は咲くの?」というご質問をよくいただきますが、蕾の開花のためには、咲ききった花を摘むのが効果的です。
というのも、グロリオサは切り花になっても、蕾や緑色だった花が咲き進み、色付かせることができます。花粉が出て咲ききった花を落とす(摘む)ことで、新しく開く花に栄養を集中させることができるのです。
希釈タイプの切り花延命剤をお持ちなら、ご使用いただくとよいと思います。花が長持ちする上に、蕾の状態から大きく美しい花を咲かせる可能性が高まります。
花粉を取ると長持ち
また、めしべが花粉を受粉してしまうと花の終わりが早くなってしまうので、花が咲いて花粉が見えたら取り除いてみてください。
青山花茂のフラワーデザイナーもひとつひとつ取り除いています。これは花を長持ちさせるとともに、花粉(おしべ)が落ちて台などが汚くなってしまうのを防ぐためでもあります。
通常の水換えや水切りに加えて、花摘みや花粉取りなどをお試しいただければ、切り花のグロリオサをより長く楽しんでいただけるでしょう。
おしゃれな見た目のグロリオサをぜひお楽しみください
グロリオサの特徴や魅力、お手入れ方法をご紹介してきました。
おしゃれな花姿や個性的な枝ぶりからフラワーアレンジにおいて定番の花、グロリオサ。高知市三里のグロリオサは世界でも高い評価を得ていて、今後ますます人気が高まっていくでしょう。
青山花茂のバイヤーによると、「本来のグロリオサの開花期は夏ではあるが、個人的に最も美しいと感じるシーズンは6月〜7月、10月〜11月ごろ」とのことです。
1本でもインパクトがあるので、これからの季節もぜひお部屋に飾って楽しんでみてください。
この記事を書いた人
株式会社青山花茂本店 代表取締役社長
北野雅史
1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。
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